イマジン屋久島 – SDGsを補助線にした島のビジョン策定

Client: 鹿児島県地球温暖化対策室

Period: 2020年6月-2021年3月

Team: 野崎恭平・大岩根尚 with HUB&LABO Yakushima, TSUZUKU 久保雄太

Outline

概要

この取り組みは、HUB&LABO Yakushima主催「屋久島未来ミーティング」の継続的な開催によって地域住民の意識が高まってきていることや、SDGsやパリ協定など社会情勢の変化を踏まえ、屋久島低炭素社会地域づくり構想の新たなビジョン、「CO2フリーの島づくり」を含めた屋久島ブランドづくりの一貫としてはじまりました。

世界自然遺産の島である屋久島には、「屋久島憲章」や「屋久島環境文化村構想」といった、約30年前に作られ今の時代もなお色褪せない素晴らしいビジョンがあります。それらを作った方々の想いを受け継ぎ、自分たちがそれを体現し後世に伝えてゆこうと、島内各地域から多様なメンバー約30名が実行委員として集結。みんなで学びと対話を繰り返す旅を共にしながら、未来の屋久島と自分たちの暮らしのカタチを探究してゆきました。

こちらはHUB&LABO Yakushima、久保雄太さん(TSUZUKU / クリエイティブディレクター)との協働で実現したプロジェクトです。

Vision

実現したい状態

屋久島の「次の30年」を共に想像し創造してゆく対話型共創コミュニティ

これからの屋久島を担う次世代のつながりを育みながら、多様な島民と屋久島の現在・過去・未来から共に学び、世界遺産登録30周年の次の30年もみんなが持続可能で豊かに生きることのできる島の「ありたい姿」を共に想像(イマジン)する。そして、その理想とする未来の屋久島を一枚のマップに表現し、すべての島民に配布。島全体でビジョンを共有すると共に、そのビジョンを共に創造し続けてゆくコミュニティを育む。

Process

プロセスデザイン

1. 旅のはじまり キックオフフォーラム

イマジン屋久島のインスピレーションは、イマジン・ヨコハマという横浜市で実施された市民参加型都市ブランド共創プロジェクトから生まれました。そのイマジン・ヨコハマを主導した中野民夫さんと兎洞武揚さんを講師に迎え、まず先進事例を知ると共に、イマジン屋久島の全体像とプロセスを共有するためのフォーラムからスタートしました。50名を超える参加者の中には、地元の高校生も。参加者同士の対話や講師への質疑応答も盛り上がり、会場は熱気に包まれました。

2. 実行委員でビジョンの素案を作るプレワークショップ

イマジン屋久島を中心となって進めたのは、島内各地域から集った約30名の実行委員です。まずは自分たちがプロジェクトの概観を体感しようと、中野民夫さんによるファシリテーションのもと、プレワークショップを実施しました。実行委員同士の関係性深めるインタビューワークの後は、屋久島の「らしさ」や「社会的価値」を対話を通して探究し、ありたい未来の屋久島の姿を想像する場に。きれいな水や水力発電、世界自然遺産、海洋資源、自然との調和など、屋久島がすでに持っているポテンシャルを見直し、低炭素社会としての屋久島の豊かさに改めて触れ直す時間となりました。

3. 屋久島の過去・現在・未来から学ぶ旅とヒアリング

屋久島の「らしさ」や「社会的価値」をさらに探究してゆくため、様々な場をつくりました。まずは屋久島憲章や屋久島環境文化村構想をそれぞれ作った方々との座談会。屋久島が世界自然遺産に認定される以前から、この島にある歴史や文化について知りました。そして、持続可能な社会に向けて今世界で起こっている変化について、豪華講師陣による連続講座をオンラインで開催。兎洞 武揚さんによるSDGs講座を始め、地球温暖化、生態系、電力、リサイクル、農水産品の流通、離島の可能性などを学びました。一方で、島内の高校生全員へのヒアリングを行い、持続可能な屋久島を考えるためのアイディアを集めました。

4. 屋久島SDGsスタートアップフォーラム

持続可能な世界へ向けた今の時代を象徴するコンセプトであるSDGs。このSDGsについてより広く屋久島で共有する場をつくろうと、実行委員メンバーが企画する形でフォーラムを開催。島内各地域から約70名の多様な事業者や地域住民が集い、SDGsカードゲームを通して価値観を共有し、これから屋久島で育ててゆきたい活動について考えました。この場で発表されたプロジェクトの数は50を越えます。

5. ビジョンの結晶化

ここまでのプロセスで集まったすべての素材(アイディアや気づき)をテーブルにのせて、それらを統合してゆくフェーズへ。改めて、屋久島は世界に向けてどんなメッセージを発信できるのか。そして自分たちはどんな未来を次の世代に残したいのか。単にありきたりな言葉ではなく、屋久島らしい表現にすることも意識しました。そうして完成したビジョンマップは、自分たちの創造をはるかに超えて素敵なものに仕上がりました。そして、このマップは島内全戸に配布されました。

6. 振り返りと次の展開がスタート

最後は実行委員でこのプロセスを丁寧に振り返り、次の展開について話し合いました。ビジョンは描いて終わりではなく、ここからがスタート。このイマジン屋久島の強みは、単に素晴らしいビジョンを生み出したというだけではなく、このプロセスを通して、そのビジョンを形にしていく担い手の共創コミュニティが育まれたという点にあります。今もイマジン屋久島の活動は継続中です。

Harvest

収穫

福元 豪士
特定非営利活動法人「HUB & LABO Yakushima」代表理事

自然と共に生きる暮らしを未来へと紡ぐ

"Imagine all the people living for today."
イマジン屋久島は、壮大なビジョンを描くプロジェクトではなく、屋久島の日常にある豊かさから持続可能なビジョンを探求したプロジェクトでした。作りたい未来より、残したい日常にある豊かさ。きっと変わっていくものもあると思います。だからこそ変わらないものも大切にしたい。「自然と共に生きる日常にある暮らしを未来へ紡ぐ」この価値を改めて得られたこと。次の30年を共創するメンバーと共有できたことが一番の宝です。僕らは今日という日のために生きている。日常の豊かさを紡ぎながら次の30年を生きる子どもたちに希望を渡していきます。

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