対話の文化を土台に「みんなの中計」を実現する中期経営計画策定プロジェクト

Client: ヤマサハウス株式会社

Period: 2019年6月-2020年4月

Team: 野崎恭平 with 倉田晋司(オーセンティックワークス)・関美穂子(アラワス / グラフィックレコーダー)

Outline

概要

鹿児島県屈指のハウスメーカーであるヤマサハウス。70年以上の歴史を持つこの会社では、3ヵ年ごとに中期経営計画(以下、中計)を作り運用してきました。ちょうど経営者交代の前夜でもあった2019年、部門長クラスのメンバーを中心に第5次中計プロジェクトがスタート。これまでは経営層のみで作ってきた中計を、この数年社内で醸成してきた対話の文化を土台として、より全社を巻き込みながら作ってゆくプロセスデザインを展開。さらに、外部環境が大きく変化していく中で、今後10年を見据え、次の時代においてヤマサが担うミッションとビジョンの探究も意図しました。こちらはオーセンティックワークス株式会社との協働で実現したプロジェクトです。

Vision

実現したい状態

ヤマサハウスをTransformする

外部環境が大きく変化する中で、社内としても経営者交代という大きな節目。このタイミングに次期中計を策定するという好機を、「ヤマサハウスをTransformする」ための場と捉えました。3年という枠を超えて、10年先の未来にまで想いを馳せ、「自分たちは何者か」を改めて問い直す。そして、経営層から現場社員に至るまで、一人ひとりがこの中計の策定プロセスに関わり、想いが聴かれたという感覚を持てる。その先に、一人ひとりが会社のビジョンに熱狂し、この会社で働いている意味を改めて理解し、自分の言葉で話すことができる状態を目指しました。

Process

プロセスデザイン

1. 前期中経の振り返りと変革テーマの探求

まずは第4次(前期)中計の振り返りからスタート。3年前に作った中計を思い出し、この3年の自分たちの歩みを丁寧に振り返りました。その上で浮かび上がってきたのは第5次中計の変革テーマ。ありたい未来の姿に向かうために、いま私たちに本質的に問われていることは何か。そんな問いに向き合いながら、これまでの「中計は誰かが作ってくれるもの」から「自分たちの手で作っていくもの」だという気運を徐々に高めていきました。

2. コアバリューの発掘とありたい姿の探求

未来を思い描くその前に、改めてヤマサハウスの本質的な価値や強みに目を向けてみる。何がヤマサをヤマサたらしめているのだろうか。70年の歴史を紐解き、ヤマサに関わる一人ひとりが体験してきた素晴らしい(ヤマサらしい)エピソードを掘り起こし、「自分たちは何者か」を改めて認識していきました。そしてその価値や強みを最大限に発揮したとしたら、果たしてどんな未来をつくることが可能なのか。それを五感をフルに使って表現しました。

3. シナリオプランニングで起こりうる未来を探索する

自分たちの願いとしての理想の未来を語るだけではなく、業界の動向やSDGsに代表される社会・環境面での変化など、様々な情報に触れるラーニングジャーニーを通して、このさき現実的にどんな未来が起こりうるのか、その複数のシナリオを作ってみました。正常化バイアスを超えて、最悪のシナリオにも向き合い、それでも自分たちはどんな未来を創りたいのか。時には逃げ出したくなるほどタフなプロセスでしたが、参加者みんなで現実に向き合い続けました。

4. 各部門による現場レベルでの未来会議

部門長クラスのメンバーが集い会社全体の議論を深めながらも、各部門ごとでも未来を探究する場づくりを実践。ファシリテーターの育成など、これまで社内で醸成してきた対話の文化があるからこそ可能な進め方でした。それぞれの場で聴かれた現場の声を、全社の計画づくりにも活かしてゆく。トップダウンとボトムアップを融合した、本質的なプロセスデザインを意識しました。

5. 中期ビジョンの言語化と計画の骨子を発表&ブラッシュアップ

ここまでの議論全体を踏まえ、中計のコアとなる中期ビジョンと、そのビジョンを実現するための計画の骨子を、経営層から発表。それをもとに、一人ひとりが言語化されたビジョンの意味を問い、各部門ごとに計画の肉付けを行っていきました。このフェーズは、それぞれの部門長がリーダーシップを発揮。全社の大きな方向性と、それぞれの部門での現場レベルの施策が一貫性を持って描かれました。

6. 経営トップと各部門長から全社員へ向けたプレゼンテーション

2020年度スタートのタイミングで、いよいよ第5次中計の全社発表。これまで経営トップからの発表のみだったところから、各部門長も全社員へ向けて、それぞれ部門のビジョンと計画をプレゼンテーションすることに挑戦しました。奇しくも経営トップが交代する大きな節目でもあり、新体制としてのメッセージと共に、みんなで創り上げてきた新たな中期経営計画、次の10年がはじまりました。

Harvest

収穫

森 勇清
ヤマサハウス株式会社
代表取締役

「その未来は我々が本当に実現したいものか」を自らに問い続ける

第5次中計策定のタイミングは私が社長交代時期とも重なりましたので、中計は社員のものとして作成することにしました。さらに大切にしたことは、「その未来は我々が本当に実現したいものか」を私たち自身に問い続けることです。個人としての未来を描き、組織として未来を描き、幹部層や現場との対話を重ねがら、「みんなの中計」にしたいとの思いが実現したことには感謝しかありません。最終版の計画書に「志」がこもった瞬間に鳥肌が立ったことは、今でも鮮明に覚えています。

その後も、かつてない環境変化に晒されながらも「ありたい姿」の実現に向けて、事業活動と両輪となる人財育成をmusuhiのメンバーと企画し、経営層から現場社員に至るまで、中計で描いた未来に想いを寄せ続けています。常に「先を見据え今できる最善を尽くす」思いで、企業も社員も自らの「夢を描く」ことを続けるために、私は活動していきたいと思います。

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