トップダウンとボトムアップを融合した「中計に命を吹き込む」策定プロジェクト

Client: 城山観光株式会社(城山ホテル鹿児島)

Period: 2020年5月-2021年3月

Team: 野崎恭平・石川世太・手嶋州平

Outline

概要

鹿児島の象徴的存在とも言える城山ホテル。観光業、宿泊業、飲食業、これら城山の業態は、新型コロナウイルス感染症によって、特に大きな影響を受けました。2020年5月には開業以来初めてとなる、1ヶ月間の全館休業を実施。そんな岐路に立たされたタイミングで、2期目となる中期経営計画(以下、中計)の策定プロジェクトが立ち上がりました。これまで通りのやり方が一切通用せず、誰にも先が見通せない時だからこそ、経営から現場までが対話を繰り返す、トップダウンとボトムアップを融合したプロセスを企画しました。

Vision

実現したい状態

新たな時代の城山のカタチを創造する

耐震工事の実施や競合の進出など、多岐に渡る課題への答えを出す中計が必要とされていました。変革の気運が高まる中、新型コロナウイルス感染症の爆発的な拡大が発生。70年を超える歴史と500名を超える社員を守りながら、経営のシビアな数字に向き合い、組織全体でこれからの城山のあり方を探究していく。一旦立ち止まることを余儀なくされた状況だからこそ、改めて原点に立ち返って大切なことに向き合い、本気で組織変革に取り組む機会を意図しました。

Process

プロセスデザイン

1.コロナによって奇跡的に実現した部門長キックオフ合宿

社長を含む幹部全員40余名による丸2日間の合宿。全館休業の最中にありありと感じられる危機感の中、中計策定プロジェクトはスタートしました。未曾有の環境下で働きながら、本当には何を感じているか。一人ひとりが率直に本音を共有するところからはじめました。そして、改めて城山で働いてきた日々をゆっくりと振り返りながら、城山の持つ本質的な価値はどこにあるのかを皆で対話。そこから、未来に向けて城山の可能性を探究します。危機感と価値への想い、未来のビジョンを語り聴き合う場となり、全社一丸となって取り組んでいく雰囲気が生まれ、中計策定に向けた当事者意識が醸成されました。

2.部門の垣根を超えた策定チームで現場の声を集める

全社の中計と並行して部門ごとの中計を策定するプロセスも走りました。一つ一つの部門は様々な部署とつながり合い、連携して業務を進めています。部門長から観える限られた範囲からだけでなく、実態に即した現状と目指すべき状態をつかむため、部門中計策定チームは隣接するいくつもの部署からメンバーを集めて構成。業務の合間を縫って、現場社員の声を集め、自発的に複数回の対話を重ねながら、部門としてのありたい姿や課題感をまとめていきました。

3.初の役員合宿 -腹を割った対話で中期ビジョンを創発-

中計は、言ってしまえばただの計画です。もちろん精緻な計画を作ることは大切ですが、それを実行する一人ひとりの本気の想いや意志が込められているか。そこに命が吹き込まれていなければ、すぐに形骸化してしまいます。全社中計のコアとなる中期ビジョンを言語化するにあたっては、役員が一堂に会する合宿を企画しました。深夜にまで至る対話の場で徹底的に腹を割った議論を重ね、最終的には「誰がなんと言おうとも私たちが実現する」というコミットメントが生まれました。

4.トップダウンとボトムアップを繰り返し議論を深める

この中計策定プロセスでは、全社の中計であっても役員や経営戦略部からの一方的な発信は極力減らし、途中経過を都度発表するとともに、現場とのすり合わせを丁寧に行っていきました。同時に、各部門中計の中間発表の場をつくり、役員も交えて部門横断的にフィードバックが飛び交う、トップダウンとボトムアップを融合させたプロセスデザインとなりました。

5.皆の本気の想いが込められた中計が完成

こうして完成した中計は、現状の課題にかなり踏み込んだ画期的な内容となりました。2021年度が始まる全社集会において、並行して制作したコンセプト動画と共にいよいよ発表。動画では、様々な社員が皆で乗り越えてきたこの1年を振り返って語り、役員からは中期ビジョン実現に向けたメッセージが語られました。形だけではない、命を吹き込む中計策定プロジェクト。本当にたくさんの人が関わりながら作ってきた成果が、そこにはありました。

Harvest

収穫

保 直延
城山観光株式会社
常務取締役

中期経営計画の策定プロセスを通しての組織進化

コロナは、私達に売上減少という厳しい現実を突きつける反面、立ち止まって自分たちの存在意義や会社の未来を考える機会となりました。そんなタイミングでの第2次中期経営計画策定プロジェクトの始動。
一人ひとりが自分自身や組織と向き合い、対話を重ねながら積み上げていくプロセス。社内では対話の文化も無い状態でスタートし、最初は戸惑いながらでしたが、回を重ねる毎に自分の考えや想いを言葉にできるようになっていきました。私は元々組織のセクショナリズムの弊害を課題として捉えていましたが、対話を通して相互理解が進み、関係性も良くなった気がします。中期経営計画策定のプロセスの中で組織の進化を実感しました。振り返ると長いようであっという間で、涙あり笑いありの貴重な経験でした。musuhiさんの伴走に心から感謝申し上げます。
まだまだ長い旅路の途中ですが、中経の目指す姿へ歩みを止めずに進んでいきたいと思います。

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