ファシリテーションスキルを兼ね備えた次世代リーダーが拓く組織の未来

Client: 山佐ホールディングス株式会社

Period: 2018年8月〜2019年3月

Team: 野崎恭平・石川世太

Outline

概要

鹿児島県屈指のハウスメーカーであるヤマサハウス。70年以上の歴史を持つこの会社では、時代の変化に適応できるしなやかな組織づくりを目指し、全社的に対話の文化醸成を進めてきました。musuhiが伴走させていただくようになって3年目となる2018年は、短期経営計画をそれぞれの部門ごとに策定する「未来会議」という場を組織変革の起点と捉え、6ヶ月間の次世代リーダー層の人材育成プログラム(全6回)を実施。彼らが未来会議のファシリテーションを担い、それぞれの部門の組織開発を推進してゆくプロセスを企画しました。

Vision

実現したい状態

次世代リーダーの本気の想いを組織変革の起点にする

変化が大きく早い時代。誰か1人の強いリーダーによるトップダウンの改革だけでは、組織はその荒波を乗り越えることは難しいかもしれません。組織全体にリーダーシップを分散し、あらゆる部門、あらゆる階層から変革のためのアクションが生成されていくこと。このプログラムでは、会社の次代を担う中堅社員を対象に、それぞれの部門での対話の場づくりに挑戦する機会をつくり、それぞれの現場レベルで変革が起こっていくことを意図しました。自分自身がこの会社で働く意味を問い直し、上司を含めた部門そして会社全体のグループシステムと向き合い、未来を探究する。部門の垣根を越えて次世代リーダーのつながりを育むことで、一人ひとりの視座の高まりと部門間連携を促し、組織全体として変革のうねりが生まれていくことも目指しました。

Process

プロセスデザイン

1.研修開始までのプロセスを丁寧に扱う

このプログラムの参加者は、それぞれの部門長からの推薦によって選ばれました。大切にしたかったのは、上司から一方的に派遣される形ではなく、参加する本人が明確な意志を持ってくること。部門長の皆さんには「皆さんが本当に参加してほしいと思うメンバーに、指示ではなく、意図をしっかり伝えて参加をお願いして下さい」と依頼。加えて、部門長と参加者合同で意図合わせを行う丁寧なプロセスを経て、全部門からメンバーが揃いました。

2.変革をファシリテーションする実践型プログラム

初回は1泊2日のオフサイト合宿から。ここから半年間、それぞれの部門で対話の場づくりを繰り返し実践していくために、ファシリテーション基礎講座を実施。ファシリテーションの要諦を伝えると共に、改めて一人ひとりが感じている現状への課題感を言葉にし、仲間との対話を通して部門のありたい姿を探究していきました。そこから、次回の集合研修までにつくる初めての場(未来会議)について、具体的にどのような働きかけをするか、その意図とプロセスを設計。お互いにフィードバックをしつつ、最後は変革への想いを言葉にして旅立ちました。

3.それぞれの現場で挑戦し、集合的に学び合う

集合研修の合間に行う、それぞれの部門での場づくりの実践。組織課題にまっすぐに向き合い、そこから本当に変革を起こすチャレンジは、最初は周りの人に理解してもらえないことも多く、何度失敗するかもしれません。そもそも、そうした場づくりを初めて行うメンバーも多い中、皆が集っての集合研修の場では、まずそれぞれの挑戦をおおいに労い、収穫と次への課題を共有します。本来の業務がある中、決して楽ではないプロセスでしたが、メンバー同士互いの状況が想像でき、それでも挑戦していく仲間がいるという感覚が支えになっていました。

4.より大きなシステムの一部としての私たちに気づく

半年間の折返しには、2泊3日のオフサイト合宿を実施。ここまでたくさんの対話と挑戦を重ねることで見えてきた組織の現状。変革を進めたいけれど思ったようにうまくいかない。中にはあからさまに抵抗してくる人だっている。これまで「私」からの視点だけで観ていた組織を、つながり合う生きたシステム(私たち)として観る場となりました。一歩俯瞰してみて、あるいは誰かの立場により深く入り込んでみると、はっとするような発見がいくつも起きました。また、自分自身の成長課題や人生ビジョンにも真正面から向き合う機会をつくり、改めて変革の意図を生成し直していきました。

5.この時代におけるヤマサの存在目的とは?

プログラムも後半に差し掛かり、自部門の枠を越えて、会社全体の未来に向き合うフェーズへ。まずヤマサの存在目的(我々は何者か)を探究するため、それぞれの上司やベテラン社員、社長に至るまで、数多くの先輩社員へ向けてインタビューを実施しました。これまで聞いたことのなかった数々のエピソードから見えてきたのは、ヤマサ独自の強みや大切な価値観。また、合わせて会社の未来に影響を及ぼす外部要因をリサーチした上で、長期的にみたリスクやチャンスも探究しました。これらのプロセスを経てメンバーの視座はさらに高まり、いよいよ最終合宿へ。

6.会社のこれからへの願いを「社長就任演説」として結晶化

最終合宿の課題は「社長就任演説」。自分がもし次期社長に就任するとしたら、どんなビジョンを掲げ、どんな変革に取り組むか。またそれをどのような言葉で綴るか。一人ひとりがこれまでの半年間の体験を通して感じ考えてきたことをまとめ上げ、短いプレゼンテーションに結晶化。発表会本番は、信じられないほどの熱気に包まれました。そして最終日には、この次世代を担うメンバーがこれからもコミュニティとしてつながり協働していくためのビジョニングと、半年間に渡る膨大な学びと経験を振り返りました。

Harvest

収穫

佐々木 政典
山佐ホールディングス株式会社
代表取締役

本当の意味でのリーダーシップ醸成のためのきっかけづくり

およそ2年経過した2021年現在から振り返ってみると、この動きが起点・火種となって各組織においてリーダーシップを発揮してくれるメンバーも出てきていると思います。リーダーシップというものの在り方は、とても奥が深いもので、「本当の意味でのリーダーシップ醸成のためのきっかけ」づくりというものは、なかなか簡単ではないと思います。私も参加者の一人として関与しましたが、本プログラムを、その「きっかけ」にすることが出来たメンバーもいるようです。

岡本 大樹
ヤマサハウス株式会社
設計部 設計・技術開発課 課長代理

個の強化と互いに信頼し合える仲間を得た未来を見越すプログラム

振り返ってみると人生の中でも有意義で新しい発見があった濃い半年でした。このプログラムで得たことは私の中で現在も持続的に動き続けています。物事を多角的にみたり、自部署や会社の存在目的、自分自身への内省、上司や自部署メンバーとの対話、ファシリテーションとなかなか日常業務のなかでは経験できないことを得ることが出来ました。

例えば、自分自身への内省については、私自身気づけなかった面を掘り起こすことができました。それは私にとって大切なものであること、それを気づいた今では行動の羅針盤であり、推進力となっています。頭の中が整理されて本質を見い出し、磨く訓練ができたと思います。

また、一緒に参加するメンバーとのパートナーシップを育めたことは大きな収穫でした。関係の質を高められた集団は、善循環が自然と作用し、お互い業務上でつながる際に仕事のスピード・精度は上がっていると思います。

個の強化と互いに信頼し合える仲間を得たプログラムであり、プログラムが終わった今もそれを活かし続けています。

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