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「過去を乗り越える選択を」南日本新聞に大岩根尚の寄稿記事が掲載されました

南日本新聞の2022年6月12日朝刊にて、環境活動家であり、株式会社musuhi 取締役、Chief Planetary Officerである大岩根 尚の寄稿記事が掲載されました。

本寄稿は、1979年10月から続く南日本新聞の社外紙面モニター制度による紙面批評で、南日本新聞からの依頼を受け、大岩根が紙面に対して本人の意見を執筆したものです。期間中、4回の寄稿記事が掲載される予定で、今回は1回目の記事です。モニター終了後には、南日本新聞編集局報道本部長が「『南日本新聞を読んで』にこう考えます」のコーナーで、今後の報道にどう生かすかなどを回答します。

1回目となる本記事内では、気候変動に関する報道についてだけでなく、鹿児島港本港区エリアの活用について、硫黄島在住者の視点から鹿児島の島々と本土との連携はもちろん、世界から人を引きつける国際観光都市としての魅力のあるまちづくりに向け、広く民意を集めた報道のあり方を求めています。

掲載された全文は以下よりご覧いただけます。

「過去を乗り越える選択を」
 コロナや気候変動、戦争など、世界は大きな曲がり角を迎えている。私たちは過去に学びつつ、しかしある局面では過去を乗り越えて新たな道を拓く選択も必要だ。
 6月5日付1面、気候変動による集中豪雨の記録。記事にある通り、気象予報の精度向上や私たちの行動力・判断力の向上はもちろん必要なことだ。しかし集中豪雨に備える一方で、そもそもの原因である温室効果ガスの排出量を抑えることも、同等以上に重要だ。「気候変動を止められるかどうかはこの数年にかかっている」という切迫した状況を理解し、紙面の常識を超えたあらゆる手段で気候変動について報じ、読者の関心を引き上げてほしい。
 次に気になったのは、本港区についての記事だ。ドルフィンポート跡地は、私自身も住んでいる硫黄島と本土とを行き来する際によく通るが、がらんとした駐車場になってしまい寂しさや不便さを感じている。本紙でもこれまで数多くの記事に取り上げてきた(6月8日6面など)。中央駅や天文館も含めた街の全体像として、鹿児島市との調整や広く民意を含めた議論が必要だとの論調で、これには私も全く賛同する。
 体育館、会議場やスタジアムなど、大会や会議の有無によって閑散と大混雑を往復する大きな建造物は、離島便を含め現地を頻繁に利用してきた私たちにとっては魅力的には思えない。観光客にとってもそうだろう。人口減少が始まり、また気候変動も相まって環境再生に注目が集まるこの局面で、200億という巨額を投入して箱物を建設することは前時代的に見える。将来を担う世代は、20年後、30年後、これをどう受け止めるだろうか。
 中心市街地のベイエリアとして、屋久島や奄美群島など離島への接続点としても、より鹿児島の価値を高めるような場所にできないか。例えば島々からの海産物や本土の農産物を集めた直売所や、それらの料理を楽しめるレストラン。焼酎やお茶のバーもいいかもしれない。マリンスポーツの体験ができたり、散歩やジョギングの人々が汗を流す温泉があるのもいいだろう。鹿児島の魅力を詰め込んだそんな憩いの場所は、市民にも観光客にも喜ばれる。体育館よりは少ない投資で長期的に大きな経済効果が見込め、火山や海と共生する国際観光都市として、横浜、神戸、サンフランシスコやバンクーバーに並ぶ港町として、世界の財産になれる。
 過去の議論を超え、関係者が新たな選択をできるよう、広く民意を集め報道を続けてほしい。
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大岩根 尚(おおいわね・ひさし) 1982年宮崎生まれ、博士(環境学)。南極観測隊に参加後、2013年に鹿児島へ。三島村役場職員として村のジオパーク認定を主導した後、仲間と起業した。硫黄島在住。

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